JA京都
暮らしのなかにJAを

JA京都 採用サイト2025

農チャンネル

2021年04月 Vol.229

持続可能な酪農経営を目指して

畜産酪農部(酪農センター)

持続可能な酪農経営を目指して
開放的なフリーストールの牛舎

南丹市美山町の今井範和さん(44)・季美子さん(40)は、16年前に大阪から移住し酪農に取り組んでいます。

28歳で酪農家の夢を実現

今井範和さん・季美子さん
今井範和さん・季美子さん

今井さん夫妻は2人そろって大阪市出身。自然の中で物づくりの生活がしたいと2004年春に結婚してすぐ北海道に行き1年間、酪農の勉強をしました。
「その時に、美山町の弓立牧場が生産者を公募していることを知り、応募して運よく選ばれました」と範和さんは話します。

この町で作られる「美山牛乳」は半世紀以上の歴史があり、そのおいしさから一躍人気商品になりました。しかし、その一方で町内の酪農家は減少し、2004年頃には4戸になっていました。弓立牧場は、酪農家の減少に危機感を抱いた美山牛乳の製造販売元、美山ふるさと株式会社が、乳量確保のため、2005年に整備しました。28歳の範和さんは一家で大阪から移り住み、牧場の設計からかかわりました。そして完成したのが当時としては珍しいフリーストールの牛舎でした。

「質の良い乳を生産するには牛にストレスを与えないことが一番という考えから、アニマルウェルフェア(「人も動物も満たされて生きる」という概念)に対応した牛舎です」と畜産酪農部の田中圭一朗課長補佐は話します。内部は、作業用の通路側から餌場、一頭ごとに仕切られたベッド、水場が設けられ、牛はその間を自由に歩き回り、気ままにのんびり過ごします。暑さに弱い牛のために天井には大型扇風機も取り付けられました。2人は42頭で酪農を始めました。

今井 範和さん

無駄のない経営に改善

酪農の将来は高齢化や後継者不足で危ぶまれています。美山町でもさらに減少し、現在は2戸になってしまいました。

酪農の仕事の基本は毎日の搾乳と牛の世話です。一般的な牧場では、搾乳、餌やり、牛舎の掃除、仔牛の哺乳・育成、繁殖管理を毎日行います。弓立牧場では、範和さんが搾乳と牛舎の掃除、季美子さんが餌やりを担当しています。作業は午前4時から午後7時まで、天候に関係なく365日24時間続きます。
「高齢化や後継者不足に加え、飼料の高騰、糞尿処理の問題など、酪農を取り巻く環境はますます難しくなっています。そうした中で、酪農を続けて行くには、無駄のない経営に改善していく必要があります」と今井さんは話します。

経営持続化のための取り組み

(1)仔牛の育成を北海道に預託

搾乳をメーンとする酪農家にとって育成牛の飼育は作業時間と経費が負担になります。そこでJA京都では、少しでも労働環境を良くするため、仔牛の育成を北海道の牧場に預託する取り組みを行っています。

田中 圭一朗課長補佐

農家に雌牛が生まれ6か月がたつと、北海道の牧場に預けます。そこで人工授精を行い、妊娠牛となり、分娩予定の2か月前に酪農家のもとに戻ってきます。そして出産を終え、親牛は乳牛として、仔牛は乳牛あるいは肉牛として育てられます。
「現在約30頭が北海道に行っています。広い牧場で放牧することで足腰が鍛えられ、生産寿命が長くなります。また、夏も冷涼なので受胎もしやすくメリットは大きい」と今井さんは話します。

(2)IoTで省力化

酪農は経験値がものをいう仕事でした。昔の人は牛を見れば、その状態が分かりました。しかし、酪農経営が難しさを増す今の時代は、確かな証拠に基づいて無駄のない経営をしなければなりません。その手助けをしてくれるのがIoT(Internet of Things=モノのインターネット)です。
すべてのモノ(牛)をインターネットとひもづけることで、牛1頭1頭から行動情報を取得し、それをもとに人工知能(AI)が解析・分析を行い、発情の見極め、体調不良の判断、飼料や薬の効果などを検証します。

「最も優れているのが発情期の見逃しを減らしてくれること。酪農経営で妊娠頭数を増やすことは最重要です。IoTでは的確に判断し自動的に予定を知らせてくれることも可能です。省力化と経営強化を図る上でこのシステムはお薦めしていきたい」と田中課長補佐は話します。

データをもとに牛の状態を確認します
データをもとに牛の状態を確認します

(3)地域循環型農業を進める

牧場の規模の拡大や宅地との混住化の進行、環境問題への関心の高まりなどを背景に、家畜の排せつ物による悪臭や水質汚染といった「畜産環境問題」があります。弓立牧場では、この問題を解決するために堆肥舎を設置。牛糞におがくずなどを混ぜて堆肥を製造し、町内の水田、畑などで使用してもらうことで、地域循環型の農業を進めています。
「水と緑の豊かな美山で、これからの酪農を考えながら、よりおいしい牛乳を届けていきたい」と今井さん夫妻は言います。


畜産酪農部(酪農センター)
〒629-0104
南丹市八木町日置フジ田1-1
TEL.0771-42-2079

ページの先頭へ