伝統の「やまのいも」産地を次代へ継承
宮津府中支店生産課
やまのいもをエアコンプレッサーで掃除する久保添さん
宮津特産の「やまのいも」を絶やさないため、Ⅰターンで農業を始めた若者が奮闘しています。
「京のブランド産品」にも認証
宮津市の「やまのいも」の歴史は古く、明治の終り頃から栽培が始まったと言われています。特に東部の栗田(くんだ)地域は、やまのいもの栽培に適した、水はけが良く適度な湿りがある農地「いも地」が広がり、市内で一番の産地として知られてきました。
「1950年頃(昭和30年代)には宮津市根菜部会が発足し、本格的な共同出荷が始まりました」とJA京都宮津府中支店生産課の井上義晶係長は話します。
その後1993年(平成5年)、宮津のやまのいもは「京のブランド産品」の認証を受けます。これは、(公社)京のふるさと産品協会が、安全・安心と環境に配慮した「京都こだわり農法」により生産された京都産農林水産物の中から品質・規格・生産地を厳選し与えられるもので、宮津市は京都を代表するやまのいもの産地となりました。最盛期の2005年の産地規模は、生産者48人、栽培面積4・7haでした。
きれいな球体で重いものが良い品とされます
収穫したやまのいもは、高級贈答品として重用されてきたほか、最近はJA京都直営の農畜産物直売所「たわわ朝霧」(亀岡市)などでも販売されています。
需要はあるが生産者がいない
やまのいもの栽培は、ほ場の準備から始まります。3月に有機物をほ場に投入し、しっかりと耕します。(連作障害を防ぐため、毎年、作付するほ場を変えます)
つるが黄色くなったら収穫間近。手作業でていねいに掘り起こします
植え付けは4月終わりから5月初めにかけて行います。その後の管理は、主に追肥と除草作業。8月のお盆あたりから9月にかけて、芋が太る時期には水が必要になるため、水の管理や乾燥を防ぐ敷きわらの作業を行います。
収穫は11月から年内12月にかけて行います。掘り起こしたやまのいもは家に持ち帰り、土を落とし、細いひげ根を取り除き、きれいにして栗田の選果場に持ち込みます。
そこで、大きさや形によって「特」「松」「竹」「梅」の等級に分けられます。最高級の「特」はソフトボールのようにまん丸で、重さ400g以上。出荷数量の数%と、希少価値の高いものです。
一方、栽培面においては「夏の除草作業や収穫時の掘り起こし作業など重労働が多く、生産者の減少が著しい状況です。現在、JA京都京野菜部会宮津市根菜部会会員でやまのいもの生産者は17人、栽培面積は1・8haと、最盛期の3分の1まで減少しました。需要はありますが、生産量が追い付いていないのが現状です」と井上係長は話します。
新規就農し、やまのいもを栽培
このような状況のなか、やまのいも栽培を志し、新規就農したのが
この事業は、市町村や京都府農業会議などと連携し、新しく就農を希望する人を対象に、技術習得から就農まで一貫して支援する実践的な研修の場として「実践農場」を整備し、新規就農を後押ししようという取り組みです。
「サラリーマンとして流通の仕事に携わる中で、『自分で作ったものを売りたい』と思ったのがきっかけ。妻の実家がある京都府北部で農地を探していた際に、新規就農者を募集していた宮津市を選びました」と久保添さんは言います。
2011年新規就農した当初は、ハウスでキュウリ、ネギなどを栽培していましたが、地域に耕作放棄地が目立つようになり、2015年から、その活用と、古くからの宮津の伝統野菜を守りたいとの思いからやまのいもの栽培を始めました。現在、やまのいもは10aのほ場で400~500㎏生産しています。
「やまのいもは栽培が難しく、形や大きさが何年やってもなかなか思い通りにいかないところに面白みを感じます。今後は栽培管理技術を高め、地域の農業を守るためにできることをしていきたい。そして将来的には、技術を伝える側に成長していけたらと思っています」と久保添さんは話します。
井上係長は「これ以上、生産者や生産面積が減ることのないように、良品については有利販売、規格外についても加工品として販売していくなど、販売面を強化したいと思っています。その結果、やまのいもを取り組む価値のある魅力ある品目に押し上げていくことによって、久保添さんのような農業をしてみたいという生産者が一人でも多く増えるよう、作付推進を展開します」と話します。
宮津府中支店生産課
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