機械化と雇用で持続可能な大規模経営
丹波支店生産課
1日あたり2tもの出荷・調製が可能
黒大豆枝豆の出荷調製作業で、機械化と短期人材雇用を併用し、大規模経営を続けている農業法人をご紹介します。
独自性のあるブランド産品
高い人気と品質を誇る丹波黒大豆を枝豆用に品種改良した9〜10月収穫の「紫ずきん」と、それよりも早く8月に収穫できる「京夏ずきん」。それぞれが1996年と2012年に「京のブランド産品」として登録されています。
丹波支店管内の農業法人・株式会社新田農園では、この独自性のある産品をメインに栽培し、色彩選別機や袋詰め機などを導入して機械化を進め、作業の効率化を目指してきました。効率化を図ることで栽培面積を25haまで拡大。収穫時期が異なる京夏ずきん、紫ずきん2号・3号、新丹波黒を栽培し、8月から10月末にかけてのリレー出荷で作業分散しています。
天候によっては人海戦術で刈り取る
丹波支店生産課の大萱聡課長は「黒大豆枝豆は他産地の競合品が少なく一定の需要があります。単価も安定しているので出荷計画に組み込めば経営も安定します」と、ブランド産品を生産するメリットを話します。
機械化による手応え・変化
「作業の効率化が図れると思った機械はすべて取り入れました」という㈱新田農園の代表取締役社長・新田尚志さん。同法人の1日の最大出荷量は2tにも上りますが、収穫から予冷庫に入れるまでの作業時間は最短で2時間ほどで済みます。今年度はさらなる生産性の向上を目指して、マルチャー2台と乗用脱莢収穫機1台を導入しました。
早速、全体の5割のほ場でマルチを使って栽培してみると以前よりも生育が早まり、雑草防除などの中耕管理もかなり省力できました。経費は機械の購入費を除いても安くはありませんが、雑草防除にかかる人件費の低減と収量増加が見込めるため、費用対効果は大きいと判断しました。生分解性マルチを使用しているので、回収・廃棄の手間も省くことができます。
出荷・調製作業の様子
近年は外来種のセイダカアワダチソウ、フウリンホオズキ、アメリカセンダングサなどの背丈が大きく生長の早い雑草が増え、その防除が大きな負担になっていました。
「マルチの効果は大きいです。昨年の9月は紫ずきんの出荷と雑草防除が重なり大変でした」と新田さんは振り返ります。
同じく、導入したばかりの脱莢収穫機は京夏ずきんで活躍しました。機械での収穫は25%程度のロスがありますが、作業スピードは3~4割もアップします。新田さんは「機械設備の減価償却費もかさみますが、作業スピードや人件費など、さまざまな条件を勘案して導入を決めました」といいます。
リスクを見越した、ゆとりのある計画
作業スピードの向上や管理作業の低減を可能にする機械ですが、使用のタイミングは枝豆の生育や天候によって左右されます。例えば、脱莢収穫機は、ほ場がぬかるんでいると引き抜いた根に土が残り、機械に負担がかかって故障の原因となるため使うことができません。
雨が続いた後や気温が下がってほ場が乾きにくくなる季節に、頼りになるのは「人の力」です。特に人手が必要な定植と収穫の時期はアルバイトやパートを求人サイトで募集します。雇用のための寮も整備しました。
天候や作物の生長具合などは思い通りにいかないため、出荷スケジュールは余裕をもって計画します。余裕がないスケジュールや人員配置、機械設備では、天災やスタッフの病気など、避けようのないリスクに対応できません。スタッフの健康と健全な経営のためにもゆとりのある計画を心掛けているそうです。獣害リスクも、予め1割程度の収量減を計算して、年間の栽培計画を立てています。
大規模経営を支える協同組織
大規模生産という共通点がある誠農海部株式会社(京丹後市久美浜町)とは情報交換を行っており、それぞれの経験を生かして生産効率を向上させるアイデアを共有することもあります。「販売はJAさんにお任せしているので、私たちは生産に専念できます」と新田さんはブランド産品の販売戦略に信頼を寄せます。
大萱課長は「大規模経営では資材や肥料の選び方一つが、収支に大きく影響することがあります。生産者の課題解決につながる情報を提供し、収量や品質の向上に貢献したいと思います」と話します。
丹波支店生産課
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