【公式】JA京都 暮らしのなかにJAを

困ったときは
大型米農家が協同し農業法人を設立

お知らせ

大型米農家が協同し農業法人を設立

大型米農家が協同し農業法人を設立

野田川支店生産課

右から瀬川魁人野菜部長、太田桂史社長、成毛一生副社長
右から瀬川魁人野菜部長、太田桂史社長、成毛一生副社長

法人化による様々なメリットを生かし、持続可能な農業をきずいていくことで、地域を守ります。

将来への不安がきっかけ

2020年2月5日に野田川支店管内の2戸の大型米農家が協同し、「株式会社AGRIST(以下:アグリスト)」(本社・与謝野町字石川544―1)が誕生しました。

代表取締役の太田桂史さんは地元米農家の3代目で、滋賀県立農業大学校を卒業後、20歳で父が経営する農家に就農しました。一方、副社長の成毛一生さんも米農家の2代目ですが、農家となったのは6年前。それぞれが親から経営を引き継ぎ、担い手として、太田さんは水稲20ha、成毛さんは水稲20haとイチゴを栽培していました。

元気に育った水稲苗を手にする太田社長
元気に育った水稲苗を手にする太田社長

法人化を考えたのは設立の4年ほど前。きっかけは、2人が抱える共通の不安でした。今は親の手伝いがありますが、リタイアしたらすべて1人でやらなければならない。しかも周りには高齢化や後継者不足で耕作されなくなった農地が目立つようになり、水路の掃除など耕作以外の仕事も増えていました。
「このままでは、いつか限界が来るだろう」と思った2人は、個人事業者が協同で農業を継続していくことを考え、農業法人の設立を計画しました。

農業のイメージから変える

株式会社アグリストの資本金は300万円。社員は太田さんの父・豊さん、母・由美子さん、成毛さんの父・義明さん、母・美弥子さん。父母には重労働にならない機械オペレーターや事務などの仕事を任せています。
そして今年から太田さんの大学の後輩で、淡路島でタマネギの栽培技術を学んだ野菜農家の瀬川魁人さん(29)を迎え、合わせて7人になりました。勤務時間は午前8時から午後6時です。

太田 桂史社長

「法人化によって、経営者や社員の意識・技能の向上、対外的な信用力の強化など様々なメリットを感じますが、私としては何といっても精神的な負担が軽減されたことがうれしい」と太田社長は話します。

それとともに太田社長が大切に思っているのが、「農地を作るアグリストとしてのモチベーションを持ち、長くやっていけること」。デニムのおしゃれなユニフォームには、「3K」(きつい、汚い、危険)が頭をよぎる農業をイメージから変えたいという強い思いも込められています。

新たに、麦、野菜の栽培も始める

初年度は水稲39haを栽培、売上は約4000万円でした。「初年度は数百万円単位の赤字を見込んでいましたが、社員個人が所有する機械をリース契約で会社の業務に使用するなど工夫した結果、ややプラスと思ったよりも良い結果となり手ごたえを感じました」と太田社長。

小西 正史さん

2021年度は、これまでどおり基幹品目は水稲としながらも、47haと少し面積を増やし、4月下旬から10月上旬にかけて「コシヒカリ」「夢ごこち」「ミルキークイーン」「どんとこい」「新羽二重糯」「京の輝き」、京都府オリジナルの新品種「京式部」を栽培しています。
また、冬場の作業を確保するために初めて小麦生産(120a)に取り組みました。丹後は雪が多いので小麦の栽培には適さないとされてきましたが、実際に作ってみると順調に生育しています。収穫調製後はJAに出荷します。

また、野菜部長として瀬川さんを迎えて本格的に野菜栽培も始めました。新たに、タマネギ25a、春キャベツ25a、ネギ10a、ナス10a、コーン20a、冬キャベツ60a、施設栽培のミズナなど、少量多品目の野菜栽培を予定しており、市場調査なども行い品目の検討を進めていくそうです。

地域の農業を守ることにつながる

販売は、アグリスト本社での直売や取引先へ出荷がメーンです。本社の建物は太田さんのお父さんが、米の流通自由化が進む最中の1993年に直売所として建てたもの。ずいぶん早くに米の直売に取り組んだ結果、現在では全国各地に400人のお得意さんがあり、株式会社になってからも20ha分はこの人たちの手元に届けています。

また、成毛さんは以前から玄米を中国やスペインなど海外に輸出販売(現在は新型コロナの影響で中断)、瀬川さんは京都中央卸売市場に勤めていたことがあるなど、それぞれに販売ルートを持っています。これからもこうしたつながりを生かして販路を広げていきたいということです。

米、野菜の直売所を備えたアグリスト本社
米、野菜の直売所を備えたアグリスト本社

「経営が安定し安心して農業に取り組むことができれば、取引拡大や雇用促進、事業継承の円滑化などが進み、それが地域の農業を守ることにつながる」と太田さん。野田川支店生産課の小西正史さんは「各地で農地の荒廃が問題になっています。アグリストさんの取り組みが、地域農業の課題を解決できるモデルケースとなるように支援していきたいと思います」と話します。


野田川支店生産課
〒629-2312
与謝郡与謝野町字四辻619-3
TEL.0772-43-2391

一覧へ