23歳の若さでみず菜栽培をスタート

府内有数のみず菜の産地、南丹市八木町。中でも北東部の山あいに広がる神吉地区は特に盛んな所です。現在は、約22人の生産者がみず菜を栽培しています。

「昭和63年、京都市内で調理師をしていた父がＩターンでここに来ました。当時、小学校１年生だった私は、豊かな自然が広がる神吉がすっかり気に入り、
家の手伝いをしながら辺りを走り回っていました」とみず菜農家の２代目・綿井庸祐（わたいようすけ）さんは話します。

その４年後の平成４年に、父・幸二さんはハウス６棟を新設、みず菜の栽培を開始されました。

庸祐さんは大学進学、就職で一旦、神吉を離れましたが、「後を継ぐつもりだった」と23歳でＵターンして父のもとで就農。38歳の若さで既にキャリア15年になります。
４年前に父から経営を引き継ぎ、現在は30棟（１ha）のハウスで、周年みず菜と九条ねぎ、夏にはトマト、ホウレンソウを栽培しています。

みず菜は年間４作、輪作で九条ねぎを入れる

地域農業を守る仕組みづくり

「神吉地区は昔から一面水田が広がる粘土質の土壌で、野菜を作るには水はけの悪い土地でした。それを綿井さんのお父さんら先人が土壌改良し、野菜用の土にしていきました」とＪＡ営農部南丹広域営農センターの小川壮之係長は話します。

海抜３５０～４００ｍに位置する神吉地域では、気温は京都市内より約５℃、亀岡より約３℃低く、冬にはマイナス10℃になることもあります。しかし霧がかからず日照時間が長いことから、全体的にみると暖かく葉物野菜の栽培に適しています。

また八木の市街地との行き来は、以前は細くカーブが続く国道４７７号を行かなければなりませんでしたが、八木町氷所と神吉を結ぶ広い農道が整備され、生活面などがとても便利になりました。

綿井さんは今、八木の市街地に住んでいます。神吉にあった小学校は、平成27年３月に閉校になりました。そのため子どもが通う小学校に近い市街地に住んで、農業をするため神吉に通っています。この道は、そんな生活スタイルも可能にしました。

「八木にはＩターンやＵターンで入植してきた若い人が増えています。農業に適した環境や、ここで生き生きと働く若い人たちの姿が、さらに広く農業に興味を持ってもらうきっかけになればうれしい」と小川係長。綿井さんは「地元若手農家と交流を行い、技術・資材・経営などの情報交換を行っています。私は『これだけ頑張ったら、こんなになる』という実践の様子を示していきたい。その中で私の父も70歳になり、会員の中には70代、80代の農家もたくさんあります。高齢化が進む中で当地のハウス数を減らすことなく、神吉の農業を引き継いでいくために、自分たちの世代の農家はどうしていかなければならないかと、この先の地域農業を守る仕組みづくりを考えています」と話します。

学校給食で八木の野菜を紹介

みず菜をはじめ京のブランド産品は、今年で31年目を迎えました。その立ち上げの際に、子どもにも地元産品に親しんでもらおうと学校給食への産品納入が始まりました。この取り組みに賛同し、八木町で継続して産品を納入してきた農家が綿井さんです。

八木町では週３日ぐらい給食に地元の野菜を使っています。献立に合わせて給食を作る八木調理場からＪＡに注文が入ります。これを受けＪＡは綿井さんに連絡。綿井さんはみず菜や九条ねぎを準備し、ＪＡが調理場に納入します。

「細かい注文で手間はかかりますが、新鮮で安全なものを食べてもらいたい一心で届けています。学校で『綿井くんのお父さんが作られた野菜ですよ』と紹介してもらった時には、息子もとてもうれしそうでした」と綿井さん。
「スーパーで買うと他産地のものが多い中で、給食で地産地消を進めてもらうのは大変ありがたいことです。ＪＡが窓口になる形で協力している所は珍しいそうですが、子どもたちに地元の野菜を知ってもらうことは大切なことですのでこれからも続けていきたい。また、みず菜産地としては、若い人に盛り立ててもらい、ＪＡも協力してやっていきたい」と小川係長は話します。

給食用の納入はまとめて簡易包装します

営農部南丹広域営農センター
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