IoTで省力化と規模の拡大を図る
畜産酪農部(酪農センター)
スマートフォンでファームノートを閲覧する敬悟さん
京丹波町下山で酪農経営をする鈴木牧場では、IoTにより牧場内の牛を管理することで、作業の省力化を図り規模の拡大を目指しています。
次男の就農をきっかけに導入
酪農の仕事の基本は毎日の搾乳と牛の世話です。一般的な牧場では、「搾乳」「牛舎の清掃」「餌やり」「仔牛の哺乳・育成」「繁殖管理」を毎日行います。動物が相手ですから季節、天候に関係なく365日24時間行わなければなりません。
「昔の人は牛を見れば、その状態が分かった。経験値がものをいう仕事でした。でも、酪農経営が難しさを増す今の時代は、無駄のない経営に改善していく必要があります」と牧場主の鈴木基司さん(56)は話します。その手助けをしてくれるのが、IoTにより牧場内の牛を管理するクラウド牛管理システム「Farmnote」(以下、ファームノート)です。
次男・敬悟さん(22)が牧場で働くようになったことをきっかけに検討を進め、2019年2月、敬悟さんが中心となって導入しました。
首につけた発信機が動きを感知し送信する
ファームノートのシステムとは
ファームノートは、農業IoTソリューションを開発する株式会社ファームノートが提供するシステムです。
IoTとは、Internet of Thingsの略で「モノのインターネットと訳されます。すべてのモノがインターネットにつながることで、それぞれのモノから個別の情報を取得でき、その情報を基に最適な方法で、そのモノを制御できるという仕組みです。
いろいろな情報がどこでも閲覧できる
鈴木牧場が導入したファームノートは、発信機を牛の首につけて、その行動(立つ、寝る、反すうする)を記録するもの。昔から使われている万歩計と同様です。集められた情報はクラウド上に蓄積され、個体ごとのデータを入力しておくと、AI(人工知能)が膨大なデータの解析・分析を行い、例えばその牛の体調不良などを判断し、スマートフォン、パソコン、タブレットで登録者に知らせてくれます。
「60頭のうち40頭を、このシステムで管理しています。スマートフォン一つで情報を管理、共有できるのが魅力です」と話します。
発情期も自動的に予測
ファームノートでできることは多岐にわたります。「カスタムリスト」を使うと、例えば発情予定日を過ぎている牛や、発情周期および生殖器には異常がないのに3回以上人工授精しても受胎しない乳牛(リピートブリーダー)、休薬期間中の牛など条件を指定して検索できます。「ノート」では、毎日の個体情報が、簡単なタッチ操作で入力でき、発情や種付け・分娩、牛群移動や廃用、販売成績など牧場に関わる様々な活動を記録することができます。
つまり、これまでのような紙の個体台帳はいりません。「ストーリー」として、一頭一頭の牛の一生を年表として確認できます。
「いろいろな機能を備えたファームノートですが、その中で最も優れているのが発情期の見逃しを減らしてくれることです」と田中係長は話します。
酪農経営をしていく上では妊娠頭数を増やすことは重要です。発情期を見逃すと妊娠の機会を失い経営に大きく影響します。しかし、的確に発情期を判断することは難しく、それがファームノートなら発信機からの情報や、入力されたデータから自動的に予定を作成します。例えば発情や種付け後の妊娠鑑定、分娩予定などを作成してくれるのです。その結果、発情見逃し頭数と妊娠頭数を計算してグラフで表示します。これにより自分の牧場での繁殖課題が一目瞭然となります。
運用に期待、広く普及へ
「このシステムを導入したことにより、日々の行動観察が簡単になり、省力化が図られました。また、発情の見逃し頭数を減らし確実に繁殖を進めていくことができています。利益を増やし、牧場の規模を徐々に拡大していきたい」と基司さん。敬悟さんは「牧場に戻って1年半、経験の浅い私でも、このシステムがあれば酪農経営が見えてきます。今後は経験を積み、父とともに牧場を盛り立てていきたい」と言います。また、田中係長は「酪農家の高齢化、後継者不足に加え、酪農経営がますます難しさを増す中、このシステムの導入が省力化と経営強化の一つのモデルケースとしてうまくいくよう一緒に取り組んでいきたい。そして酪農はもちろん、肉牛(繁殖・育成・肥育)すべての経営形態で利用できれば」と話します。
畜産酪農部(酪農センター)
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