農家の絆が被害拡大を防ぐ
京北支店
伏見とうがらしの出来を確認する山内さんと一瀬営農相談員
生産者同士が連携することで、有事の際に農作物への被害拡大を最小限に留めた事例を紹介します。
京北の施設栽培の状況
約15年前に京北地域に移住し、農業の世界に飛び込んだ山内宗(つかさ)さんは、伏見とうがらしやスナップエンドウ、紫ずきんなどを中心にこの地域の気候に合わせた栽培方法を試しながら面積を拡大してきました。また、一つのほ場で資材を繰り返し利用する「省力・省コスト農業」を実践し、近隣農家に広めることで地域農業の活性化に貢献してきました。
しかし、京北では生産者の高齢化や担い手の減少に加えて大雪によるハウス倒壊のため、今年度は施設での栽培面積が激減した状態でスタートしました。
生産者の山内宗(つかさ)さん
予見できない天候による被害
厳しい生産体制の中、京北地区のほ場は平成30年7月豪雨により浸水や土砂流入の被害を受け、農作物の出荷量減少にさらに拍車がかかりました。
山内さんも被災農家の一人。2棟のハウスに流れ込んだ泥水の水位は最大約50㎝にも達し、完全に水が引くまで3、4日かかりました。その後は一転して日照りが続き、とうがらしが見る見るしおれていったといいます。経験したことのない災害に対し、解決策は見つからず「全部枯れても仕方がない」と思っていたところに、生産者仲間で同じく水害に遭った谷口歩さんから「7月後半に予定していた伏見とうがらしの切り戻しを前倒しする」という対策案を聞きました。4月から京北管内で新規就農したばかりの谷口さんですが、園芸専門学校で農業を学んだ経験があり、農家の先輩である山内さんも信頼を置く存在。自分も試すことにしました。
京北支店生産課の一瀬康平営農相談員や農業普及センターとも相談し、切り戻しと同時に樹勢を回復させる土壌改良剤の施用、斑点細菌病の防除などを併せて実施しました。その効果もあり、伏見とうがらしの3分の2は枯れずに元の勢いを取り戻しました。
山内さんは「被害に遭った全てのほ場が回復した訳ではありませんが、何もせずにあきらめていたら間違いなく全滅だった」と言います。生産者同士のつながりが、可能性のある次の行動を起こすきっかけになりました。
葉にくっきりと残された水害の痕跡
今年から始めた『互見会』
これまで個々での情報交換はされていますが、生産者同士が互見会をすることはありませんでした。そこでJAからの提案で今年度からほ場の互見会を実施。品質の向上につながる生産体制作りを目指していた中で( 豪雨災害)は起こりました。
一瀬営農相談員は「生産者とJAが知恵を出し合い協力することによって、被災した農作物も復活し出荷することができています。自然災害を防ぐことは難しいですが、生産者同士の絆をさらに深める体制を構築し、農業経営を支援していきたいと思います」と意気込みを語りました。
京北支店生産課
一瀬康平営農相談員
京北支店生産課
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