自給飼料で和牛の繁殖
畜産酪農部酪農センター
トラクターで牧草の刈り取りをする良樹さん
繁殖牛の産地として知られる丹後だが、近年は高齢化や後継者不足で畜産農家の数は減っている。そうした中、京丹後市丹後町の大江良樹さん(59)・健人さん(33)親子は、自給飼料にこだわった和牛繁殖を手掛けている。
複合経営の一つとして
標高540mの依遅ケ尾山のふもと、丹後町矢畑で?いちがお畜産を営む2人。和牛の繁殖は昭和55年、父・良樹さんが1頭から始めました。
「専業農家として複合経営を考えていました。米と葉タバコの栽培をしていましたが、和牛の繁殖にも取り組んでみようと思いました」と良樹さんは話します。その後、徐々に頭数を増やし牛舎を増築。平成26年1月6日に?いちがお畜産を設立し、現在は4棟の牛舎で親牛38頭、子牛28頭を飼っています。
自給飼料を牛に与える健人さん
息子の健人さんは、北海道の酪農学園大学に進学し、卒業と同時に帰郷。半年間、府の畜産センターで働いた後、父親と一緒に働き始めました。
「子どもの頃から手伝っていましたから、ごく自然に今の仕事に就きました。畜産農家を取り巻く環境は厳しいものでしたが、何とか経営を成り立たせていきたいと思いました」と健人さんは言います。
複合経営の一つとして
大江良樹さん
そのこだわりのひとつが、牧草の自給です。現在、牛のえさは価格の高い輸入飼料に頼るところが多く、経営を圧迫しています。その点、牧場の周辺には国営団地やかつて水田だった所など、牧草を栽培できる土地がたくさんあります。そこへ牛ふんなどから作った堆肥を入れ、飼料作物を栽培し牛に食べさせるという循環型農業を実践しています。
「約12haの土地で、牧草を栽培して牛に与えています。自給率は約6割です」と健人さんは話します。また、山沿いの牛舎の周辺に広がる放牧地で、主に妊娠牛を放牧しています。豊かな自然の中で牛はストレスなく、のびのびと育ちます。
「放牧も、飼料作物の栽培も、畜産を始めた頃から続けていること」と良樹さんは言います。
そうした努力の甲斐あって、平成24年10月には、長崎県で開かれた第10回全国和牛能力共進会に府代表として「わかひら号」を出品しました。大会は5年に1度、府代表は1頭という厳しい選考でした。
農地を守ることにも
「丹後で培われてきた和牛繁殖の技術を守るためにも、牛も牛舎も少しずつでも増やしていきたい」と良樹さん。「京都は観光客も多く、牛肉の消費も多い。品質の良いものを市場に出せるよう優秀な和牛子牛を生産していきたい」と健人さんは言います。また、JA京都畜産酪農部の俣野明弘課長は「米・野菜農家の高齢化や後継者不足によって耕作放棄地が増えています。牛の放牧は、獣害の侵入を防ぎ農地を守ることにもつながります。その点にも期待しています」と話します。
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