地域色豊かな農業法人の活躍
本店営農部
「農事組合法人きたや」は野菜を出荷し経営安定化を図っている
農家の高齢化、後継者不足による耕作放棄地対策として、農業法人が注目されています。
府内の集落営農組織数は増え続け、平成29年には343を数えています。
一集落一法人での集落営農
亀岡市の「農事組合法人きたや」(森川秀樹代表理事)は平成29年4月に発足したばかりの新しい農業法人です。北谷(きたや)は同市千歳町に含まれる21世帯の小さな集落。国営ほ場整備事業採択後、地域の農業をどのようにしていくのか議論が重ねられました。住民全員を対象にしたアンケートでは「農地の利用調整や農作業委託体制の強化が必要」「個人としては経営主体ではない、農地の出し手となる」などの回答が多く寄せられ、この結果なども踏まえて、北谷区で守っていく「一集落一圃場での集落営農」を選びました。
現在、組合員16人。出資金511万円。平成30年度は、水稲457・58 a、もち米53・27a、飼料米387・66a、小豆14・58a、合計913・9aを耕作。稲の後に冬野菜5品目を作付けし販売しました。
「当面は経営の安定化を目指し、仕組みと人を育てていきたい。将来に渡って集落営農が継続できればいいと思っています」と森川代表理事。亀岡広域営農センターの能瀬伸昭指導販売係長は「エコファーマーの取得や『冬期たん水』など、こだわりの農業を実践されています。経営安定のため、兼業でも作れる冬場の野菜を提案していきたい」と話します。
ムラを守る「小さな拠点」
南丹市美山町鶴ヶ岡地区の「有限会社タナセン」は今から20年前の平成11年に発足しました。JAの広域合併に伴う支所の廃止により鶴ヶ岡地区でも購買店舗が閉鎖となりました。そこで地域の営農と生活を守るため、地域住民106人の出資により有限会社を設立。農作業の受委託を行う農事部、食品や生活用品を販売する「ムラの駅たなせん」を経営する購買部、高齢者のサポートを行う福祉部の3部署で事業を開始しました。
農事部では、高齢化が進む地域の課題である農地保全のための取り組みとして、転作を中心に集落を越えた広域農場方式を推進しています。同社が広域営農組合の事務局的機能を担い、集団転作を一括請負した上で、各営農組合へ再委託し、作業料金を支払う仕組みとなっており、それにより集落営農組織の収益向上と集団管理体制のための資金造成を図っています。
「タナセンは、集落単位で対応できない作業に限り受けます。高齢者でもできることはやってもらい、地域農業の維持に参画することで生きがいややりがいを感じてもらうことを大切にしたい」と代表取締役の上田幹男さんは話します。
現在、タナセンが管理する土地は約100ha。作業受託で支えるほか、水稲では低コスト化が図れる鉄コーティング栽培の技術指導を行うなど、新しい技術の確立にも努めています。また、「生産調整対応として平成28年度からWCS稲5haを栽培。独自で販路を開拓したソバは8ha、大豆は3haと栽培面積を拡大している」と総務部長の川勝淳弌さんは話します。平成30年度の売上高はタナセン全体で2980万円。そのうち農事部では512万円を売り上げている。
「JAとしては、技術指導、資材・肥料の選定などでアドバイスすると同時に、推奨作物の選定などにも取り組んでいきたい」と美山支店生産課の大萱聡課長は話します。
ムラの駅たなせん周辺には、よっこらしょ(休憩所、浴場)、鶴ヶ岡振興会、郵便局、小学校、ほかの商店、旧保育所を活用した住民の活動の場などがあり「小さな拠点」を形成しています。
大規模営農を堅実に進める
福知山盆地の中心に位置する遷喬地域は、観音寺、興(おき)、石原(いさ)、戸田、土の5地区からなり、平坦な農地では主に水稲単作の農業が行われてきました。
平成14年に農水省補助事業基盤整備促進事業が始まり、19年3月に遷喬Ⅰ地区、20 年3月に同Ⅱ地区の整地工事が完了し、1枚が1ha規模の大規模ほ場に生まれ変わりました。
「石原、戸田、土の3集落の営農組合が、より効率的な農業への転換と地域農業の発展のために議論を重ね、平成20年3月に一つの法人として再編し設立されたのが『農事組合法人遷喬ふぁーむ』です」と代表理事の杉山元明さんは話します。組合員数172人、出資金516万円、事業内容は、農作物の栽培及び加工、販売などの農業経営、農作業の受託。施設や機材など、最初は3営農組合のものを持ち寄りスタートしました。
「法人化後は水稲単作から、小麦、野菜などを導入。営農だけでなく、近年は直売所も開設しています」と副理事の小西博さん。現在は、施設や機材なども計画的に入れ替えを進め、トラクター、コンバイン、田植え機、ブームスプレーヤなど、大型機械もそろいました。また、農業法人観音寺や農業法人あぐり興との3法人で出資し、株式会社西中筋ライスセンターを設立。ほぼ、体制は整いました。
平成30年度は、水稲35・9ha(コシヒカリ・キヌヒカリ・ヒノヒカリ、京の輝き・秋だわら・WCS・モチ米)、麦・小豆11ha(せときらら・京都大納言)、野菜1ha(キュウリ・紫ずきん・山の芋・花ほか)などを栽培し、売上高は4300万円。そのうち毎週土曜日営業の直売所「樂菜(らくさい)」では約700万円を売り上げています。
「毎年、由良川の水害が心配です。そのためにも堅実な経営を心掛けていきたい」と杉山代表理事。福知山支店生産課の西原一男課長補佐は「営農指導、肥料や農薬の選定や使い方など効率化の提案、野菜の選定などに努めていきたいと思います」と言います。
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