春の味覚「ウド」で伊根の農業をPR
宮津府中支店生産課
ビニールハウスの横に設けた畑で
伊根町の専業農家・二ノ倉芳樹さんは、年間を通して京みず菜を栽培する一方、珍しい産品ウドを出荷し、地元農業をPRしています。
商品価値の高い白くてやわらかいウド
ウドは日本原産で、朝鮮半島や中国にも分布するウコギ科タラノキ属の山菜です。自生地では初春に萌芽したばかりの若芽を採取し、芳香と甘みを賞味しました。江戸時代に入ると、土寄せをして、自生のものより長いウドを採取し、販売するようになりました。やがて、根株を養成して軟化床に伏せ込む軟化栽培が始まりました。当時の幕府はウドを贅ぜい沢たく品ひんとして販売を規制したこともあったそうです。
「伊根町では山に行けばウドが自生しています。地元では珍しくありません」と「二ノファーム」を経営する二ノ倉芳樹さんは話します。二ノ倉さんは18年前、脱サラして神戸から妻・順子さんの親戚がある伊根町に移住しました。自分で何かを作ることが好きで、京みず菜と九条ねぎを出荷する専業農家になり、現在は40~50mのビニールハウス8棟で年間を通して京みず菜を栽培しています。その二ノ倉さんが10年前、小学生だった息子の担任の先生に勧められ始めたのがウドの栽培です。
畑はビニールハウスの横にあり、幅1.5m、長さ20m、高さ30㎝くらいの畝が続いています。この土の中に自生する山から持ち帰ったウドの根株を移植し栽培されています。
二ノ倉夫妻ともみ殻の中で大きく生長したウド
「一度植えたら、後は放っておいても毎年勝手に育ちます」(二ノ倉さん)というウドですが、商品価値の高い白くてやわらかいウドを育てるには、光の遮断と適切な温度管理が必要なため、3月中旬、軽トラック5~6杯のもみ殻を投入し「伏せ込み」という作業を行います。また、霜が降りる、放射冷却など急激な温度変化が予想される時には、畝をシートで覆うなど温度管理に気を付けます。
店頭に並ぶとすぐに売り切れる人気
ウドの収穫は4月20日頃からゴールデンウィークの終わりにかけて行います。土やもみ殻を落とし、150~200gの束にして「京の山ウド」と書かれた袋に入れ、月・水・金の週3回亀岡市篠町にあるJA京都の農畜産物直売所「たわわ朝霧」で販売されています。
順子さんが作ったウド料理
ウドは独特の香りと歯ざわり、淡白な甘みがあり、古くから和え物、酢の物、吸い物、刺身のつま、みそ漬け、一夜漬け、煮物、油炒めなどとして日本料理に欠かせません。
「ウドを出している人はおそらく二ノ倉さんぐらいでしょう。大人好みの味ですが、昔から田舎で食べていて懐かしく思う人などもあるようで、リピーターもたくさんおられます。店に並ぶとすぐに完売する人気の商品です」と伊根町を管轄する宮津府中支店生産課の下村明彦課長は話します。
昨年は約300袋を出荷しました。
漁業と農業が共に盛んなまちに
二ノ倉さんがウドの栽培を行うのには、営農品目の一つというだけでなく、重要な目的があります。
「伊根というと漁業の町と思われていますが農業も盛んです。私と同じようにIターンで移住して来た30代、40代の若い農家もたくさんあります。珍しいウドを出荷することで伊根に興味を持ってもらい、農家も頑張っているということを知ってもらえればと思っています」と話します。
その思いは妻の順子さんも同じです。順子さんは2年前からビーツ(ビート)を作って同じくたわわ朝霧で販売しています。ロシア料理のボルシチに欠かせない野菜として知られる根菜です。「食べる輸血」や「奇跡の野菜」とも言われ、美や健康に関心が高い方からもとても注目されており、様々な栄養を摂れるだけでなく、食卓に鮮やかな彩りを添えてくれます。
順子さんは、伊根の農家ミセス3人で4月から11月までの期間、月に1回のペースで民俗資料館「おちゃやのかか」(伊根町亀島)を借りて「農家食堂ファームフレッシュ」を開き、ビーツを使ったランチやボルシチなど、心も体も元気になるメニューを提供しています。
「地元で取れた野菜を実際に味わってもらうことで、農業のことを知ってもらえれば。今後、ウドを使った料理なども出してみたい」と順子さん。芳樹さんは「これからも春の風物詩としてウドを出荷するとともに、様々な野菜の栽培にも挑戦してみたい」と言います。また、下村課長は「伊根に合った新たな品目を増やしていきたい。そして広く流通させることによって、農業のまちとしてPRしていきたい」と話します。
もみ殼の間から少し頭を出すウド(3月上旬)
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