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伏見稲荷大社の伝統行事を支える「わら工芸」

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伏見稲荷大社の伝統行事を支える「わら工芸」

伏見稲荷大社の伝統行事を支える「わら工芸」

JA京都京北支店・美山支店

1300年にわたり、人々の信仰を集め続ける「お稲荷さん」の総本宮・伏見稲荷大社。JA京都京北・美山両支店の水稲生産者は、同社の伝統行事に使うわら細工を毎年奉納しています。

美山からは迎春用の大しめ縄

美山町では「鶴ケ岡しめ縄グループ」(和田洲会長)が大しめ縄を作っています。同グループは1989年に発足。現在21人(男性12人、女性9人)で活動しています。最初は一般家庭向けの「ゴボウ」と呼ばれる小さなしめ縄を作っていました。家庭用は現在もJAを通して京都生協に出荷しています。

伏見稲荷大社へ大しめ縄を奉納するようになったのは1991年から。それまで奉納していた他府県の生産者が高齢で辞められ、代わって同グループが作るようになりました。今年は本殿や奥の院などに飾る55本を納めます。「その中で一番大きなしめ縄は本殿用で、全長7・28m、直径は10㎝というサイズになります」と和田会長は話します。

10月に入るとしめ縄作りが始まります。材料は「新羽二重もち」の稲わらで、今年刈り取ったものをJAが用意します。しめ縄に使うわらは、長くて柔らかいものが扱いやすくて向いているそうです。「わらの良し悪しで仕上がりが変わります」と和田会長。一番難しいのは束ねたわらをねじる作業。大きなものは3人がかりでねじります。ここで息が合わなければ、大きさが一定になりません。力も必要ですが技術も要求される作業。うまくできるようになるまでに5~6年はかかるそうです。

3人で呼吸を合わせて稲わらをねじる

京北からは講員大祭用の米俵

京北では、大和田信也さん(77)と竹内昭文さん(68)の2人で協力して米俵を作っています。10月12日と13日に行われる講員大祭に京北産コシヒカリの新米を入れた米俵20俵を奉納します。同大祭は稲荷大社の振興団体である講務本庁の講員が神恩に感謝し、家内安全・生業繁栄を祈願するもので、大祭期間中は桜門に並べられます。

20の俵を2人で2日半で仕上げる

大和田さんは米俵を作って15年のベテラン。材料となるわらはしめ縄づくり同様、長くて柔らかいものが適しているということで、自らもち米をバインダーで刈り取り、稲木で天日干ししています。そうして準備した稲わらを冬の間にきれいに掃除して専用の用具を使い、わら束を編んで菰(こも)にします。奉納を前にしたこの日の作業では、この菰を丸め、端を編み合わせて筒にし、端を内側に織り込んで、まず底になる部分を作ります。中に袋に入った60㎏の米を詰めます。底とふたを、亀の甲羅のように編状に編み上げた縄で外れないように押さえます。この作業は熟練の技が必要です。胴体を数か所、わら縄できつくくくると完成です。「引っ張り具合で、目が粗くなったり細かくなったりします。均等に力を加えて、形の良い米俵に仕上げるのが難しい」と大和田さんは話します。

高齢化、後継者不足が課題

伏見稲荷大社の伝統行事を共に支える、美山のしめ縄、京北の米俵ですが、どちらも作り手の高齢化、後継者不足が大きな問題になっているのが現状です。

「発足時は30人ほどメンバーがいましたが、今は当時のメンバーは残っておらず、会員も21人まで減りました」(和田会長)というしめ縄グループでは、後継者を発掘、育成するために毎年、鶴ケ岡地区の振興会主催でしめ縄教室を開いています。今年も11月24日に開催の予定です。また、依頼を受けて園部や亀岡などで出張講習をしてPRしています。

米俵作りは現在、大和田さんと竹内さんの2人だけ。竹内さんは、大和田さんの近所に住んでいることからスカウトされて今年で4年目。「一年に一度のことですので忘れてしまう」と言いながら、2人とも「残していかなければならない」と退職した人を中心に声をかけるなど、地道に勧誘活動を続けています。

米俵を作る 大和田 信也さん

生産者と共に取り組む美山支店生産課の大萱聡課長は、「しめ縄作りは収入の一助になるだけでなく、やりがいの大きな仕事なので生きがいにもなり、高齢者の方の健康作りにもつながる。また、地域の人が集まって取り組むことで地域のつながりが生まれます。

今はしめ縄作りのための治具を個々人で用意し取り組んでおられるが、グループ内で共有することで慣れない人でも作りやすくなり技術の伝承が進むのでは」と話します。

協力しあいしめ縄作りを進める鶴ケ岡しめ縄グループ

また、京北支店の荒田勉支店長は「伏見稲荷大社との取引は40~50年前からと聞いています。生産者にとっては有名な神社に奉納することで京北産のお米のPRになり、市場競争が厳しい昨今では非常にありがたいことです。このような伝統はぜひいつまでも残していきたいと思っています」と話します。


京北支店生産課
〒601-0271
京都市右京区京北熊田町広野23
TEL.075-852-0071

美山支店生産課
〒601-0751
京都府南丹市美山町島島台55
TEL.0771-75-0013

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