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農家所得に貢献する梨の販売戦略

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農家所得に貢献する梨の販売戦略

農家所得に貢献する梨の販売戦略

久美浜支店生産課


台湾、ベトナムの植物防疫所に登録されている梨の生産ほ場

梨の府内生産量の約9割を占める京丹後市久美浜町では、久美浜支店と梨農家が一緒になって、梨の販路拡大や、高い値段で販売できる海外への出荷など、農家の所得向上につながる販売戦略をとっています。

高齢化、後継者不足で栽培面積が減少

久美浜町における梨の栽培の歴史は古く、明治時代からと言われています。土壌や気候が梨の栽培に適していて、府内の先がけとされる平田地区で収穫した「平田なし」は全国一と評されました。その後、同町内をはじめ網野町でも盛んに生産されるようになりました。

今から25年ほど前には、久美浜町浦明、鹿野、大井、壱分、網野町俵野に国営農地が造成され生産面積が一気に増えました。平成9年には久美浜町浦明に、梨の選別・計量・箱詰めをオートメーションで行う「JA京都久美浜梨選果場」が完成し、選果作業の省力化を実現するとともに、果実の規格・品位の判定が確実にできるようになりました。

「約100年の歴史がある久美浜の梨は、京都市場などで常に高い評価を受けてきました。しかし近年は、高齢化、後継者不足に加えて、高い生産技術が必要なうえ、人工授粉や袋掛けなど作業が大変なこともあり、若い世代が少ないことが問題で、現在、会員農家が栽培する梨畑の合計面積は23haですが、以前と比べると減ってきています」と久美浜と網野の生産者31人で組織する久美浜町梨生産協議会の稲葉茂敦会長は話します。

3年前から海外へ進出

「日本の1人当たりの果物消費量は先進国で最下位です。また、デフレ経済の中で家計は嗜好品から節約されます」とJA京都久美浜支店生産課の畑中孝昭主任は話します。

国内需要の伸びが期待できない状況の中で、販路拡大を目指すJA京都では海外、中でも市場にたくさんの果物が並ぶ東南アジアへの進出を考えました。そして3年前から台湾に向けて梨の出荷を始めました。

台湾では三大節句の一つに数えられる「中秋節」(旧暦8月15日)に梨や文旦、スイカなど丸い果物や月餅という伝統的なお菓子を月にお供えします。この時期に贈り物をすることも多く、梨は贈答品として需要が高まっています。特に青梨でも大きなサイズのものが好まれています。

そこで久美浜支店では台湾需要に合わせて、日本国内では大き過ぎて敬遠されがちな4L、5Lサイズの青梨の最高の階級「特秀」のものを送っています。需要と供給が合致した結果、現地では1個1000円前後の高値で販売されています。

梨の出来を確かめる稲葉茂敦会長

「日本の果物の品質の高さは海外でも良く知られています。海外へ輸出する場合、植物防疫があり、台湾はアジアの中でもトップクラスの厳しさですが、京丹後産の梨の栽培では以前から厳しい出荷規格を設けていたので、特別な作業をほとんど追加することなく生産できました」と畑中主任は話します。

台湾への出荷数量は、平成29年度が11・5t、30年度が20tでした。今年度も20tを目標にしていますが、中秋節が9月13日と特に早いことから「玉太りが間に合うか心配」と稲葉会長は言います。

久美浜支店 畑中 孝昭主任

新たな海外販路拡大へ向けて

さらに海外での販路の拡大を目指すJA京都では、京都府や市場、輸出業者、生産者、全農と一緒に協議会を作り、今年度からベトナムへの進出を目指しています。

ベトナムでは正月までが高値で取引されることから、久美浜支店では10月中旬から11月下旬にかけて収穫期を迎える「新興( 赤梨)」の出荷を予定しています。

「ベトナムは台湾以上に植物防疫が厳しい国です。ただ、ハードルが高ければ高いほど、クリアすれば優位に立てます。私たちはすでにクリアしており、後は現地での販売先を求めての営業活動になります」と畑中主任は話します。

一方で、玉が小さい、甘さが足りない(10度以下)、傷がついているなど、いわゆる「規格外品」の販路拡大にも取り組んでいます。昨年度はジュース、氷菓などの加工原料として6tを販売しました。長年の販売先である地元の福祉施設が運営するレストランや加工所では、ドリンクバーや瓶詰めのジュースに加工されています。これまでに梨のワインの原料になったこともあり、JAでは多様な利用の可能性を探りながら販路を拡大しています。

内部品質センサーを備えた久美浜梨選果場

「台湾への出荷を呼び掛けたことで、多くの農家の生産意欲が向上したと思います。今後も農家がやりがいを感じる販売先を拡充してほしい」と稲葉会長。畑中主任は「台湾への販路開拓は、新規出荷農家の増加や全体の出荷量と販売品取扱高の増加など、産地の活性化に良い影響があったと思います。農家にとって有利な販路を開拓することで農家所得の向上に貢献していきたい」と話します。

台北市で京たんご梨をPR


久美浜支店生産課
〒629-3551
京丹後市久美浜町永留250
TEL.0772-84-0801

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