瑞穂大納言小豆の 増産に向けて
瑞穂支店生産課
トラクターによる播種
京丹波町瑞穂地区の特産「瑞穂大納言小豆」は高級和菓子の材料として重宝され、約40年前から盛んに作られてきました。しかし、その栽培は時間や労力が掛かる手作業が多く、農家の高齢化が進む中、生産量が減少しています。危機感を募らせた地元では、瑞穂地区農業技術者会が増産に向け機械化栽培の実証実験を始めています。
「5・5・5運動」
「瑞穂大納言小豆は、大粒で色つやが良く、薄皮で煮詰めても型崩れしない特徴があり、全国の和菓子業者や料理店、消費者から高い評価を受けるブランド小豆として知られています」とJA京都瑞穂支店生産課の竹村裕容課長は話します。
除草剤散布のようす
その歴史は約40年前にさかのぼります。ほ場整備をきっかけに本格的に栽培が始まり、昭和55年には瑞穂町農協小豆部会が発足しました。
その後、昭和62年度から始まった水田農業確立対策による大幅な転作を機に、数量的には少なかったものの、高い評価を得ていた小豆に着目。これまでの転作の取り組みを小豆に集中し、町の特産品として将来的にはブランド化を目指すことにしました。
こうして「5・5・5(GO!GO!GO!)運動」が栽培面積50ha、販売数量50t、販売金額5千万円と、目標を61年度の倍以上に設定してスタートしました。
栽培農家、農家組合や農協、普及所、町などが一体となって取り組んだ結果、栽培面積65ha、販売数量63t、販売金額5千5百万円と、全てにおいて目標を上回るとともに、品質・価格面とも府内で最高の成績となりました。
機械化に向けて実証実験を開始
瑞穂農業公社の軽尾孝さん
「5・5・5運動」以降、栽培面積60ha以上を維持した小豆でしたが、5年後の平成4年には60haを切り51haに。さらに5年後の9年には49ha、14年には40ha、19年には16ha、23年には11ha、そして28年には約10haまで減少しました。
原因としては、播種や収穫など栽培の多くは手作業で、時間や労力が掛かること。生産者が減少している上に、高齢化が進んでいることなどが挙げられます。
危機感を募らせた地元では、JA京都瑞穂支店、同南丹広域営農センター、府南丹広域振興局、同南丹農業改良普及センター、京丹波町、同瑞穂支所、府農業共済組合京都支所、瑞穂農業公社で構成する瑞穂地区農業技術者会(正式名称、京丹波町農業技術者会瑞穂地域部会)が、増産に向け、機械化栽培の実証実験を始めました。
「同じ実験を平成17年にも一度行っています。その時は、トラクターによる播種とコンバインによる刈り取りを行いましたが、刈り取り時に2割ほどがこぼれて、もったいないという意見が出て、それっきりになりました」と同会会員で瑞穂農業公社事務局の軽尾孝さんは話します。
今回の機械化実証実験は平成26年から始まりました。この年は京丹波町井脇、27年は橋爪、粟野、28年は質美と場所を変え、トラクターによる播種、ブームスプレーヤーを使った消毒、コンバインによる収穫について、畝の種類や播種の間隔など条件を変えながら、生育の状況や機械を使った作業の効果など検証を加えました。
省力化への効果を確認
平成28年は質美の生産農家、上林忠雄さんらのほ場3枚50aで実施。7月19日に行われた播種では、湿害防止のため畝を立て2条植え(条間90cm)のほ場2枚(約18a、約20a)と、平畝で3条植え(条間55cm)のほ場1枚(14a)に、株間25cmと19cm間隔に種をまき、雑草防除剤を散布しました。
京丹波町瑞穂支所の
上林太志さん
播種用のアタッチメントを付けたトラクターを使い、土を耕すと同時に2粒ずつ種を土に埋め込んでいきました。播種自体は問題なく、発芽率も95%と順調でした。しかし、その後の天候不順で着莢は少なくなりました」と先の軽尾さんは話します。
11月下旬にはコンバインを使って収穫が行われました。瑞穂地区農業技術者会事務局で京丹波町瑞穂支所支所長補佐の上林太志さんは、「手作業より大幅に短い時間で効率的に収穫ができました。ただ、平畝は問題なかったものの、畝を立てた2条植えでは、つるが伸び過ぎると刈り取れないという問題が残りました」と話します。
平成29年は八田のほ場50aで実施の予定で、これまでの問題点の改良に加え、播種の時期を変えて、生育状況を見ながら機械化を検討していくということです。
地域ブランドを守る
実証実験で収穫した小豆の比較
瑞穂大納言小豆は商品価値が高く、地域戦略作物として国や町などの交付金が付くなど、大きな可能性を持つ品目です。
「団地化、法人化など大規模経営ができる体制作りを進めることによって大きく面積の拡大を図ることもできます。農業公社としては、播種、刈り取り、乾燥など、機械化でお手伝いをしていきたい」と軽尾さん。また、竹村課長は「瑞穂大納言小豆は貴重な地域資源です。これを増やしていって、収入に変える。JAとしては、営農指導、販路の拡大などを進め、地域ブランドを守っていきたい」と言います。
瑞穂支店生産課
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