堀川ごぼう
2007年12月 Vol.69
生産者、農作業
水の管理が第一条件です
堀川ごぼうは耐湿性の低い野菜です。例えば、雨が続き浸水が2日以上続いてしまうと、途端に腐ったり根が多くなってしまい、商品価値が大きく下がってしまいます。常にうねを高い位置に保ち、土壌を水はけの良い状態にしておくことが、堀川ごぼう作りの第一条件だと感じています。また、夏場のうねへの敷きわらも、乾燥防止や雑草防除、さらに急激な生長を抑制するために忘れてはいけない大切な仕事です。
あとはJAの指導する京都こだわり農法に準じて、たい肥の投入は10アール当たり1~3トン、また有機質肥料や緩行性肥料を使う反面、化学農薬は出来るだけ使わない栽培を心掛けています。
堀川ごぼうは食べる箇所によって違う味わいが楽しめます。太い胴の部分は肉質がち密でやわらかく、肉詰めなどの煮物に最適ですし、先端の細い部分はさっと炒めてきんぴらなどにすれば食感、香りも良くおすすめです。今後は生産量を上げて、一般の消費者にももっと食べてもらえるようにしていければと思います。
産地
JA京都管内唯一の産地
直径5~6センチ、長さ80センチ、重さ約1キロにもなる堀川ごぼうは、サイズや重量のほかに、表面に見られるヒビ割れ、内部の空洞化など、一般のゴボウとは大きく異なる産品です。間人管内には平成元年に品種「柳川」が導入され、平成4年の京のブランド産地指定を経て、現在に至ります。なお、現在の規模は生産者6人、作付面積50アール、昨年の出荷量は約3.2トンでした。
部会による栽培講習会や中間検討会、目合わせ会、市場見学会が行われる一方、間人支店では現在の流通先が京都市内の料亭に限られていることから、今後は一般消費者に向けたレシピの作成等で、販路拡大に努めていく予定です。
取材当日、集荷場では生産者による出荷作業が行われていました。
- 収穫までの流れ 堀川ごぼう(間人管内の場合)
-
5月 中旬 ほ場の準備 6月 中旬 定植
※株間70?の1条植え(植える角度は15度)下旬 敷きわら 7月 中旬 追肥
※5?/10アール施用
※以降、1か月ごとに追肥(計4回)10月 下旬 収穫
※葉は10~15? 残して切る12月 中旬 終了
おすすめの一品
福知山市ヒロコクッキングスクールさん直伝
堀川ごぼうの肉詰め照り焼き
- 材料(4人分)
- 堀川ごぼう1/2 本
- 豚ミンチ150g
- 玉ねぎみじん切り1/4 個(50g)
- 【A】パン粉1/3 カップ、牛乳1/3 カップ、卵黄1 個、おろしショウガ小さじ1/2、濃口しょうゆ大さじ1/2
- 【B】水1 カップ、スープの素1/2個、さとう大さじ2/3、オイスターソース大さじ2、酒大さじ1、ニンニクすりおろし少々、豆板醤小さじ1/3
- 片栗粉
- ごま油
- ショウガ汁大さじ1/2
- 花ニンジンやダイコン、パセリ各適量
- 作り方
- 堀川ごぼうは10cm程の長さに切り、圧力鍋に入れて、ヒタヒタの水を加え火にかける。沸騰後(加圧後)弱火で3分煮て火を止めしばらくおき、冷めたら金串や竹串等で筋に沿って中を抜く。
- 豚ミンチに【A】を合わせて加え、玉ねぎも入れてよく練り、ごぼうの穴のまわりに片栗粉をつけて詰める。
- 1cm厚さの輪切りにし、切り口に片栗粉を少々つける。フライパンにごま油を入れ、両面焦げ目が付くくらいにさっと焼き、合わせた【B】を加え3~5分中火で煮込む。つやが出てきたらショウガ汁を入れ、火を止める。
- 花型で抜いたニンジンやダイコンをやわらかくゆでて、パセリとともに付け合わせとして盛り付ける。
堀川ごぼうのお手軽ポタージュ
- (4人分)
- ごぼうの芯や先100~150g
- 玉ねぎみじん切り1/2個
- コーンクリーム缶200g
- 牛乳1カップ
- パセリみじん切り
- バター大さじ山盛り2(30g)
- 小麦粉大さじ山盛り1
- 水2カップ
- チキンスープの素1個
- 作り方
- 堀川ごぼうの芯や先を小さめの薄切りにし、生の場合は水につけてあくを抜く。
- 鍋に分量のバターの半分を入れ、玉ねぎを炒め、残りのバターと粉を足して軽く炒め、(1)も加えてさらに少々炒め、水・スープの素を加え5分ほど煮込む。
- コーン缶と牛乳を入れ、さらに5分ほど煮込み、塩・こしょうで味を調え、器に入れてパセリを飾る。
- ひとくちメモ
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じっくり年月をかけて作られた堀川ごぼうは普通のごぼうよりやわらかく、栄養価も多く、あくも少ないです。食用として利用されるのは日本だけと言われるそうですが、肉詰め照り焼きは手軽に作れておいしいので、ぜひお試しください。
伴みずほ先生の堀川ごぼうのココがすごい!
伴 みずほ
京都短期大学講師
(管理栄養士)
冬の食卓を彩るごぼうは、ユーラシア大陸北部が原産地。10世紀以前、中国から薬用として伝えられ、日本でのみ食用として品種改良されました。堀川ごぼうの起源は16世紀頃、一般のごぼうを特殊栽培したもので、太く短い根がユニークな京野菜です。秋に香り高くなるごぼうの中で、特に香気が良く繊維が軟らかなのが特徴で、筒切りにし中の空洞を生かした肉や海老しんじょの詰め物料理が有名です。
一般のごぼうに比べ食物繊維、ビタミンB1などの含有量は高めで、特にビタミンC は約3倍多く含まれています。ごぼうに多く含まれる食物繊維は水溶性食物繊維(イヌリン)と不溶性食物繊維(セルロース、リグニンなど)で、どちらも胃腸で消化吸収されず、不溶性食物繊維は肉よりも数十倍の水分を吸収し便量を増やし腸に刺激を与え、特にリグニンは腸内で発がん物質を強く吸着し一緒に排泄します。リグニンは切り口で多く増えるため、“ささがき”がお勧めの切り方です。イヌリンは余分なコレステロールを吸着し血糖の急激な上昇を抑え、腸内の善玉菌(ビフィズス菌など)の餌となり善玉菌を増やすと同時に悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境が改善し免疫力を高めます。独特の歯ごたえは繊維質に多く含まれるこのイヌリンです。他の根野菜と組み合わせ運動不足がちな寒い冬をおいしく過ごしましょう。
主な成分比較(根野菜100g当たりで比較)
堀川ごぼう | ごぼう | 金時にんじん | れんこん | やつがしら | くわい | |
---|---|---|---|---|---|---|
カルシウム(mg) | 58.9 | 46.0 | 37.0 | 20.0 | 39.0 | 5.0 |
マグネシウム(mg) | 94.8 | 54.0 | 11.0 | 16.0 | 42.0 | 34.0 |
鉄(mg) | 0.4 | 0.7 | 0.4 | 0.5 | 0.7 | 0.8 |
ビタミンB1(mg) | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
ビタミンC(mg) | 9.7 | 3.0 | 8.0 | 48.0 | 7.0 | 2.0 |
食物繊維総量(g) | 8.9 | 5.7 | 3.9 | 2.0 | 2.8 | 2.4 |
- 五訂増補 日本食品標準成分表, 京都府保環研年報 第39 号P50-55(1994)参照
- 日本食品大事典P135 医歯薬出版(株) 参照