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2020年06月 Vol.219

国産小麦「せときらら」が人気

園部黒田支店生産課


「せときらら」の生育を確かめる小畠さんと山下主任

パンの消費量で全国1位になったこともある京都府。管内でも水田転作作物として小麦「せときらら」の栽培が急増しています。

「せときらら」とは

パンや中華めん用の小麦の作付面積は、消費者の国産志向を受け、全国的に増えています。京都府でも、この10年の間に3倍に増え、現在150haで栽培されています。

そのメーンが「せときらら」です。この品種は2006年8月に西日本農業研究センターが、日本めん用小麦「ふくほのか」から育成しました。

京都府では2016年度から福知山市と亀岡市で試作を実施し、2018年4月に奨励品種に指定され、京都産のパン用小麦は全てこの新品種に切り替えられました。

特性は、グルテンが強く製パン性に優れていること。条件が良ければ、輸入のパン用小麦に近い適性が得られます。また、アミロース含量がやや低く、もちもち・しっとりとした食感のパンが作れます。
栽培特性としては、温暖地向けのパン用品種として収量が多く、赤かび病抵抗性や穂発芽耐性に優れるため、安定生産が期待できます。

「京都府ではそれまで『ニシノカオリ』が奨励品種でしたが、『せときらら』は成熟期は変わらないものの、収量は1aあたり55・9㎏(ニシノカオリは40・4㎏)、容積重は848g(同831g)、パン評価点は78(同70)といずれも上回っています」と園部黒田支店生産課の山下富生主任は話します。

大西営農組合の倉庫には、ブームスプレーヤやコンバインなどが保管されている
大西営農組合の倉庫には、ブームスプレーヤやコンバインなどが保管されている

園部の大西営農組合でも栽培

「せときらら」の生産地は、管内では福知山や亀岡、南丹などに広がっており、多くの農業法人が積極的に栽培しています。その一つが南丹市園部町の農事組合法人「大西営農組合」(代表理事・小畠政博)です。

高齢化・担い手不足が進む園部町大西集落で、2013年12月に集落の全農家37戸が組合員となり設立。集落内の農地24haで水稲、小麦と後作の小豆のブロックローテーション方式による転作や、稲刈り・米の乾燥調製など農作業受託で農地の保全に取り組んでいます。

今年は生育が良く刈り取りは少し早くなりそう
今年は生育が良く刈り取りは少し早くなりそう

「小麦は10年以上前、任意組織の大西営農組合の頃からめん用小麦としてよく知られる『農林61号』を作っていました。その後、京都産を謳ったパン、ラーメンなどの需要があるということで2016年に試作を行い、2018年から奨励品種『せときらら』を作るようになりました」と小畠代表理事は話します。

同組合では現在、4・3haのほ場で「せときらら」を栽培しています。栽培方法は普通の小麦とほとんど変わりませんが、製パン性に優れ収量も多い品種のため、高たんぱく化に不可欠な穂揃期の追肥など、少し作業が増えました。

小畠政博代表理事

組合では作業の省力化のため、トラクターやブームスプレーヤ、コンバインなど機械化を進めています。また、品質保持のため小麦専用のコンバインを導入し、乾燥調製はJA京都美山ライスセンターで行っています。

「実需者が求める『ふっくらしたパン』ができるよう、収量と品質の安定に努めていきたい」と小畠さんは話します。

地域を挙げてのプロジェクトも

京都産小麦の「せときらら」への品種切替をきっかけに、その魅力を消費者に知ってもらい、楽しんでもらおうと2019年1月に初めて開催されたのが「京小麦の収穫祭」(主催・井澤製粉株式会社、協賛・JA全農京都、後援・京都府)です。

京都府内のラーメン、パン、イタリアン、お好み焼き、居酒屋、洋菓子などの飲食店が、京都産小麦を100%使って開発したメニュー・商品を提供する地産地消の取り組みです。昨年は1月21日から2月17日まで開催。56の参加店舗を4つのグループに分けて、1週間ごとに提供しました。今年は参加店舗が100店舗まで増え、1月20日から3月29日までの約2カ月間にわたり提供。生産者・製粉会社・飲食店・食品会社が「オール京都」で一丸となってPRしました。

牧場主鈴木さん

参加店舗や利用した消費者は「しっとり感がある」「もっちり感がいい」「中太や太めんに合いそう」など好評でした。

小畠さんは「組合がJAに全量出荷している小豆は手作業収穫にこだわり、高品質で実需者の評価も高い。新しい品目の『せときらら』についても徐々に分かってきました。こだわりを持って栽培していくことで利益が上がる作物として育てていきたい。そして、集落全体で組合の運営を行っている意識を高め、地域の保全に取り組んで行きます」と話します。また、山下主任は「6月中旬から『せときらら』の刈り取りが始まりますが、組合ではその前に目合わせをされます。個々も大事ですが、組合として取り組んでいただくことで品質の平準化が図られます。JAとしては組合に寄り添い、収益性の高い新たな品目を提案し一緒に取り組んでいきたい」と言います。


園部黒田支店生産課
〒622-0052
南丹市園部町黒田大木本37
TEL.0771-62-1688

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